2016年11月10日木曜日

とりあえずの「ごめんなさい」って?

こんにちは、永野むつみです。
一年中全国をまわって、人形劇の公演を続けています。

おかげさまで人形劇の公演はいつも親子づれでいっぱいになります。
劇が終わればわたし(というより主役のお人形さんですが)は、小さな人との握手会に大忙し! とても楽しいひとときです。
一方で、最近では若いお母さんたちから子育ての悩みを相談されることが多く、気になっています。
大人たち自身が生きにくい窮屈な世の中で、お母さんたちがおおらかな気持ちで子育てできなくなっているのかもしれないと。
すでに成人した長男が母親のわたしにつけた点は「58点」。
けっこういいじゃない!と思ったら、次男によれば「合格点は60点だよ」ですって。

子育てってほんとうにむずかしい。
どんなにがんばったって、100点ママになんてなれっこないんです。
59点でいいじゃない。
かけがえのない子育ての時間なのです。
もっと楽しんでみませんか。

      *

わたしが小さかったころも子どもどうし、ちょっとしたもめごとはありました。
理由はささいなこと。
わたしが「赤!」と言うのに、友だちが「青!」と言い続ける。
「もう、遊ばない!」
ぷいっと別れる。
1日、2日と、遊びに行かない。
でもそのうち、友だちのことが気になり始める。
だってやっぱりいっしょにいると、楽しいんだもの。
ゆるしてやるか。
そう思い始めたころ、ちょうど同じころ、あの子も、
ゆるしてやるか。
と思ってる(らしい)。
そしてえいっとでかけると、
「やあ」と。
また、ふたりはいっしょに遊び始める。
なにごともなかったかのように。
「ごめんね」という言葉はすでにいらない。

考えがちがうからいっしょにいられないわけじゃない。
一緒に遊びながら、「ほんとは赤なんだけど、青っていう人もいるんだ」と意見の違う人がいることを知る。
受け入れがたいからときどきぶっつかる。
ぶっつかりながらも、一緒に遊ぶことが楽しいから仲直りする。
仲直りには時間がかることもあったわけです。
もちろん、そこに親の介入はいっさいありませんでした。

最近、公園ではこんなシーンをよく見ます。
AくんがBくんにちょっかいを出す。
BくんがAくんをたたいてAくんは泣き出す。
すると、ママどうしでおしゃべりしていたBくんのお母さんが飛んでくる。
「あやまりなさい。たたくのはいけないって言っているでしょう⁉」
Bくんは黙っている。
「ごめんね、って、言いなさい‼」
無理やりBくんの頭をおさえて、とりあえずのごめんねをさせる。

さて。
このとりあえずの「ごめんなさい」は、何を育てるのでしょう。
気持ちが納得していないのに、とりあえずのごめんねを言い合う習慣は、心と言葉をバラバラにするようで心配です。
とりわけ感性が一番育つ子ども時代に。 

わたしが小さかったころは、「子どもはケンカをしながら大きくなるもんだ」というおおらかな大人たちに囲まれていました。
よほどのことがない限り放っておいてくれました。
おかげでケンカをしても、「やっぱりあの子と一緒に遊びたい」、だから「ごめんねしたい」の気持ちが自分の中に育つまでのじっくりした時間がもらえました。
自分の力で落とし前をつけるやり方を、学ぶことができました。
それで、大人になれたのだと思うのです。

小さな人には乱暴な時期もあるということ、今すぐにごめんねを言えない日も、言いたくない事情もあるということ、ぜひご自身の小さい時のことを思い出してみてください。

小さな人たちの心からの「ごめんね」を育てるために、周りの大人たちみんなで、待ちあいませんか。



そのためにも「私の子ども」から「私達の子ども」と言い合える
大人たちの関係が大事なのでしょうね


永野むつみ
山形県生まれ。プーク人形劇アカデミー、町田市障害者青年学級主事、人形劇団カラバスを経て
1988年に片手遣い人形専門劇団・人形劇団ひぽぽたあむを設立。同人形劇俳優・代表。
2012年にはO夫人児童青少年演劇賞受賞。
絵本の会「むつみ塾」主宰。役者、演出、脚本、講演と多岐にわたり活躍中。
http://hipopotaamu.com/