「ボク、未来のことは考えないことにする」
「未来は死だからね」
突然息子がそういいました。
30数年前のこと、私の誕生日を間近に控えたある日のことです。
息子は保育園の年長さん。
驚く私にかぶせるように、
「だってボクが大人になったころ、お母さんはおばあさんになって、そして死んじゃうんでしょ」
息子はそう言って涙ぐみました。
「だからボクはもうこれから、未来のことは考えない。今日のことだけ考えて生きることにする」
静かで確かな決意表明でした。
そうなんだ。そうだね。それがいいね。
息子の言葉はちゃんと覚えているのに、私がどんな言葉でそれに応じたのか、覚えていません。
ただ、ただただいとおしくて抱き締めたことだけは覚えています。
たった5年しか生活していない「小さな人」の哲学。
あああ、この人は仲間だと、一緒に生きる大事な仲間の一人だと心から思った瞬間のひとつです。
小さな人を侮ってはいけません。
私は息子たちとの暮らしのなかで、
人は人を信じ愛することができるのだということを体験し、学びました。
それまでの人生のなかでも、両親を含め家族に、親戚に、友人に、いろんな人の愛のなかで生きてきたのだと思いますが、
息子の愛は容赦なく真っ直ぐで、私に何も問わない。
その事に驚きました。
こんなふうに愛されたことがあるだろうか。
産んだだけなのに。
ありがとう、息子たち。
おかげさまで私は昨年末に70歳になりました。
トケイソウ。 時計の文字盤に似た花をつけるので この名がつきました。 |
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